働き方改革 リモートワーク説得の巻き①(在宅勤務備忘録・続編その5)

POINT
  • 上司を説得!と、その前に
  • 対策!むりかべさん
  • どう動かす?むりかべさん

上司を説得!と、その前に

在宅勤務にリモートワーク。コロナの影響もあって、いま働き方はこの話題で持ちきりです。その輝かしいポテンシャルについては、何回かに分けて説明してまいりましたが、とはいっても、おいそれと導入できないのもまた事実、その輝きはまるでガルウィング羽ばたく高級車のようにもみえ、果たして大企業以外には指をくわえて眺めることしかできないのか…というところに、まずはリモート会議から一歩ずつ始めてみましょう、というご提案が前回。それに関して、今回はリモートワークを上司に提案する、そんな手助けとなる内容をつらつらと書いていきたいと思います。長くなりそうなので2回仕立てで…ご興味ある方は、お付き合いください。

私は今まで、理念7実践3くらいの配分で拙文をしたためてきましたが、それは会社ごとに勝手は違うだろうという配慮あってのことです。今回、上司に提案なんていささかストレートなテーマに思えますが、これも実は、理念的なところを含んでいます。なぜなら、会社の上に立つものこそ、リモートワークへの理解が必要だからです。あえて言いましょう。上司の理解無くして、リモートワークは「絶対に」成功しません。「絶対に」ですよ!「絶対に」!

そりゃ決定権は上司にあるもんな、ってそうじゃありません。正確に言えば、社員全員の理解が必要なのですが、その中でも、とりわけ上司の理解が必要…ここでいう理解とは、「よし、うちはこれからリモートでやっていくぞ!」という覚悟、スタンリー司令官の言葉を借りるなら「これが唯一最大の手段であり、会いに行く選択肢はない」という理解です。

対策!むりかべさん

私が一番危惧していることは、やってもいないのに無理無理!という人の存在です。ひとまず彼を「むりかべさん」と呼びましょう。彼の、そのアナログ原理主義の思想はいろんな所に影響を及ぼします。「リモート会議じゃ名刺交換もできないんでしょ?無理無理!やってらんないよ!」あらゆるテクノロジーには長所と短所があります。もちろん、アナログデジタルを問わずに。手書きの手紙も、電子メールも、そうです。電子メールには香水が吹けないからといって、手書きの手紙に乗り換えるビジネスマンがいるでしょうか?ところが、むりかべさんは「デジタルは不能である」というゆるぎなき先入観をもって、在宅勤務のすべてを否定しようとし、その態度は、在宅勤務者はもちろん、その評価者などにも非常にネガティブな印象を植え付けることになります。「この資料、家で作ったんだって?じゃあダメだよこんなの!家じゃ仕事になんないんだから!」
これは極端な例でしょうか?リモートへの理解がないとは、しかしながら、こういうことなのです。リモートは対面に劣る、という誤解については前回ご説明したとおりですが、一体どうしてこうなってしまうのでしょう?彼らを改心させることはできないのでしょうか?

むりかべさんの態度を、単純に非難することはできません。彼らはただ知らないのです。デジタルで何ができて、何ができないのか。21世紀になってからのコミュニケーションツールの進歩には目を見張るものがあり、若い(自称)の私でさえ、時々「こんなこともできるのか!」と驚くことがあります。デジタルに疎い人が、デジタルにできることを知らないのも無理はないのです。
ですので、まずは、与えましょう。ツールを、技術を、知識を、与えるのです。「いやいや、むりかべさん。リモートでも名刺交換できますから。ほら、こうやって。」と見せてあげてください。あれはどうだ、と言われれば、こうしてください、と。恐らくリモート会議でできないことと言えば、握手くらいのものです。

ただし勘違いしてはいけないのは、リモートは万能ではないということ。もちろんリモートワークにもデメリットはあります。そこを誤って「リモートにすればすべてうまくいく」と考えてはいけません。オフィスとリモート、そのバランスが大切です。その見極めは、過去のコラムを読んでいただければ十分理解していただけると思います。

このバランスをうまく取るために、システム担当者にはかなりの苦労が強いられます。だって会社中のむりかべさんを相手にするのですから、気分はお客様相談室。中には急な対応を求めるあまり、強い口調で迫ってくる人もいるでしょう。しかし、ここが一番の踏ん張りどころ。「やっぱりデジタルはダメだな」なんていう意識が生まれた途端、むりかべさんが笑うことになります。上司がそうなれば、リモートワークが形だけのものになることだってありえます。だって、そんな人の下で在宅勤務をする勇気、少なくとも私にはありませんもの。

以前のコラムで「ツールの浸透には組織の上の人の姿勢が大切」というお話をいたしました。今回のテーマに合わせるならば、ひっくり返して、このようにも言えるかもしれません。「上の人が使わなければ、下の人は使わせてもらえない。」…未だ在宅勤務が浸透しない理由のひとつとして「経営陣がツールを使えないから」というのがあります。正確に言うなら、使おうとしない、が正しいのでしょう。そして使おうとしないから、会社にツールが導入されない、だから在宅勤務に踏み切れない…

実際のところ「どうやるの?」と聞いてくる姿勢さえあれば、むりかべさんは問題にはなりません。なぜなら、少なくともデジタルでやろうという意識はあるのですから。「困ったことがあればバックアップしますよ、だからデジタルでやってみてくださいね」という体制づくりこそ肝要で、むりかべさんを減らす秘訣はそこにあるとも言えます。弊社にも情報システムチームに直通するホットラインが整備されており、なにかIT関連の問題が起きた際にはすぐに専門家が駆けつけてくれます。彼らなしに、弊社のリモートワークは決して成り立たないことでしょう。まさに困ったことがあれば相談できる環境、仕組みを作ることが大切なのです。

どう動かす?むりかべさん

では「デジタルでやってみよう」という気持ちにさせるには?あなたは西本喜美子さんという写真家をご存じでしょうか。彼女は72歳からカメラを始めたおばあちゃんフォトグラファー。前職が美容師の彼女は、もちろんパソコンなんて触ったことがありません。ところが74歳にしてMacを手に入れると、画像編集ソフトを駆使した作品を次々に発表。それが高く評価され、ついには個展まで開催してしまいます。そして92歳となった今ではInstagramをバリバリに使いこなし、元気に活動中です。画像編集ソフトといっても「ペイント」じゃないですよ。MacとPhotoshopです。92歳でPhotoshopを使えるおばあちゃんがいるのに、現役でTeamsを使えないサラリーマンがどこにいるというのです?それは、使えないのではなくて、使おうとしないだけではないですか!?…と、迫るのもいいですが、彼女はインタビューにて「とりあえず、やってみること」「みんなと楽しむこと」が成功の秘訣であると語っています。

実は彼女のご家族がカメラ塾を開いており、そこで地域のお友達と一緒にスキルを習っていたそうです。そうやって仲間と楽しみながら撮っていくうちに、その魅力に取りつかれたとか。これはリモートツールにも当てはまることだと思います。とにかくやってみて、そのメリットを体験させてみる。そうするうちに「ああ、こりゃ確かに便利だなあ」と思わせたらこっちのもんです。何も言わずとも勝手にリモートを有効活用してくれることでしょう。「やってみせ、言って聞かせて、させてみて…」とは、もう忘れられた言葉でしょうか、とにかく、「押し付ける」強硬策ではなく「体験させてみる」懐柔策を心掛けましょう。そのための講習会やワークショップも積極的に採用すべきです。そうやって地道にまいた種はかならず芽を出します。

このように、今回はツールの観点から仮想むりかべさんと戦ってきましたが、次回は異なる視点から説得のネタを考えてみましょう。求人です。長くなりそうなので、今回はここで。

WPD/S・O