働き方改革 在宅勤務備忘録 その9 ~次のオフィス編

POINT
  • もしもオフィスが変わるとしたら
  • 法律
  • アメリカ
  • 世論

6月1日より、弊社でもオフィス通勤が解禁されました。一か月間の在宅/通勤の併用期間があり、来月からは元の生活に…いや、来月の話をするのはまだやめておきましょう。実際のところ、これらかどうなるのでしょう?未来のことはだれにも分かりません。第二のパンデミックが起きてまた外に出られないかもしれませんし、案外すぐに終息するのかもしれません。コロナに代わる次の感染症がやってくることだってありえます。

仮に、このままコロナが落ち着いていくとしたら、その時オフィスってどうなるのでしょう?いま色んな会社で「コロナ後のオフィス業界」の予想が始まっています。こういうオフィスがくる、こういうレイアウトがくる…私たちは次の時代に乗り遅れないよう、そういった予想を仕入れて回っては、社内で共有しています。そこにはオフィスビジネスとしての思惑もうごめいているのですが…今回は私の個人的な考えをご紹介させてください。

もしもオフィスが変わるとしたら

まず、これからの社会の潮流として、コロナ対策を含む防疫という項目は、間違いなく生まれることでしょう。それは、今までのオフィスにはない全く新しい視点になります。去年まで三密を考慮してオフィス作りをしていたところなんか、全くないはずです。ところが、これからはこの新しい視点の評価軸が生まれる…可能性がある。あるいはないかも。あいにく未来を予知できないもので…今のところ、あるとすれば、その理由が必要だとは言えるでしょう。

オフィスというのは、あらゆる建築の中で最もビジネスに近い存在です。それはつまり、最も損得を考慮する建築であることを意味します。とても言いにくいのですが、オフィスが人情や思いやりで動くことは、そうそうありません。リフレッシュエリアだって、社員がかわいそうだから作るのではなく、リフレッシュすることで作業効率が上がるから、作るのです。家が住むために作られるように、オフィスは働くために作られるのですから、当然です。ですから、防疫という視点もまた、オフィスにとって利となる限りにおいて、取り入れられることになります。なぜなら一般的に、防疫とは生産性に反する考え方だからです。考えてみてください、「明日から隣とひとつ席空けて座るように…」なんて言われたら、社員の半分はオフィスから溢れてしまいます。だからこそ、オフィスが防疫の視点を取り入れるとすれば、そうするだけの理由が必要なのです。私の考えるその理由は3つ、「法律」「アメリカ」「世論」…ひとつずつお話ししましょう。

法律

いま、オフィスに防疫という視点は取り入れられるのか、というお話をしていますが、実は同じようなことが以前にもありました。防災です。地震大国の日本は、昔から防災という視点を持ってはいましたが、特に平成に入ってからというもの、耐震偽装問題や台風、震災といった経験を経て、国からより一層厳しい取り組みを求められています。時には方針として、時には法律として、企業には企業防災が責任となっているのです。その結果、今のオフィスでも、防災ヘルメットや備蓄を始め、発電機、割れにくいガラス、燃えにくい壁紙といった物的な対策から、社員の安否確認システムやBCM、BCPといった計画的な対策まで、様々な手段が講じられています。いくら震災で怖い思いをしたからといって、それだけでオフィスに防災が採用されることは稀でしょう。いや、地震だけではありません。日本の建築基準法が改正される背景には、いつも悲しい事故がありました。特に顕著なのが消防です。スプリンクラーの位置や消火器の数などを定める法律は、それをより厳しくするだけの火災事故があって、その度に修正されていきました。これは暗に、「法で縛らない限り、十分な防災には取り組んでもらえない」という現実があるのかもしれません。

防疫も恐らく同じ道をたどるでしょう。オフィスはとにかくコストがシビアに関係してきます。そんなオフィスで、法律にも方針にも定められていない防疫に関して、各会社が自発的に取り組むというのは、いささか楽観的であると言わざるを得ません。火災ですらそうなのです。ただでさえ景気が悪い昨今、一体どこの会社が社員の二倍を収容できるテナントに引っ越せるというのでしょうか?もしもオフィスが防疫に関心を持つとすれば、ひとつは嫌々ながらも法律に従う形で、実現するはずです。

アメリカ

アメリカがくしゃみをしたら日本が風邪をひく…というのは経済における日米関係を表した、ちょっとした言い回しです。オフィスに関しては、全くこれが当てはまります。オフィスの将来像はずっと、アメリカが牽引してきました。世界のIT市場を独占するGAFAはどれもアメリカに拠点を置いていますし、世界一のオフィス家具見本市NeoConも毎年アメリカで開催されています。日本だけでなく世界中のオフィスが、アメリカを中心に廻っているといっても過言ではありません。今では日本でもすっかり定着したリフレッシュスペースや集中ブースだって、GAFAのオフィスやNeoConから輸入された文化なのです。特にGoogleとAppleはオフィスだけでなくその働き方、人事制度、マネジメントシステムまでもが、いわばビジネスのお手本のように参照されています。

今回のコロナ騒動、日本は感染者数約1万7000人、死亡者数約900人と、先進諸国の中では比較的被害が少なかったといえるでしょう。ところがアメリカは感染者数186万人、死亡者数10万人。100万人当たりの感染者数を比べても、日本の40倍近くです。またアメリカの死亡者数は全世界のおよそ1/3を占めています。(2020年6月現在)。さすがにこれだけの被害となると、アメリカがオフィスに防疫を取り入れたとして、不思議ではありません。アメリカの法律だって変わるかもしれません。となれば、アメリカに拠点を構えるGAFAも、またアメリカを市場としているNeoConも、防疫を考慮したオフィス作りに踏み込む可能性があります。その時、その文化が日本のオフィスを刺激すれば、日本にも防疫の考え方が広まることでしょう。恐らくアメリカのオフィスが防疫を取り入れるとすれば、それは単純に間隔をあけるだとかアクリル板の仕切りを立てるとかいった、その場しのぎの対策ではないはずです。彼らはきっと、新しい働き方と呼べるにふさわしい完成度で、防疫を取り入れることでしょう。それはまさに、防疫を取り入れることが会社の利益となるデザイン。防疫に全く興味のない会社でも、それを採用したくなる魅力を持つデザイン…アメリカにはそれをデザインする力があります。そんなムーブメントがアメリカで起これば、日本も変わる可能性があるかもしれません。

世論

もしも、法律もアメリカも変わらなかったとしたらどうでしょう?その時は、日本の人々の意識が変わるかもしれません。特に、若い人の。近年、働き方改革が叫ばれて、日本のオフィスも様々に形を変えてきました。時短や作業効率化といったワードがあちこちに躍り、とにかく残業を減らせ、ワークライフバランスをとれ、と時代が動いているのです。その原動力のひとつに法律があることは間違いないでしょう。2018年に成立した働き方改革関連法案は、2019年から施行され、今月(2020年6月)にはパワハラ防止法も施行されました。これに従うように、オフィスも会社も変わっていきました(従わないと怒られますから)。

しかしもうひとつ、オフィスを動かした力があります。それが人材です。2005年ごろから、就活生が「残業時間の少なさ」や「有給休暇の取得率」を企業選考の項目に挙げていると囁かれてきました。また同時期に「ブラック企業」という言葉も生まれ、そのあとには転職サイト・転職エージェントが雨後の筍のごとく誕生します。オフィスが働き方改革に応えるのは法律のおかげかもしれません、ですが法律は新卒や働く人の考え方にまで、それを強要することはできません。就活生や中途社員がよりよい働き方を求めたのは、まさしく人々の意識が変わったから…というより、この人々の意識が法律を作ったというほうが正確かもしれません。どちらにせよ、企業は人材獲得・人材確保のための働き方改革にも奔走することになりました。社員に鞭を打って働かせる時代は終わり、今は社員に気持ちよく最高のパフォーマンスを出してもらう時代が訪れたのです。もしも同じようなことが防疫にも当てはまるならば、オフィスはそちらにも気を使う必要があるでしょう。つまり、来年の就活生が企業選考ポイントに「コロナ対策」をぶっちぎりの一位で選んだとしたら、人事部もわたしたちも卒倒する羽目になるということです

来年の今頃、オフィスがどうなっているのかは分かりません。ですが、オフィスとはコストと生産性に密接に関係するもの、それが防疫と簡単に手を結ぶことは、恐らくないでしょう。結ぶとすればそこには何か理由、前兆があるはずです。今回わたしが述べた3つの理由は、あくまで私個人の意見ではありますが、どれも事前に察知できるものです。法律もアメリカのオフィス事情も人々の意識も、明日ぽてっと変わることはありえません。もしもこの前兆を嗅ぎ取ることができれば、これからのオフィストレンドの一歩先を行くことができるかも…その時は(予想を的中させた私の功績も含めて)、ぜひ弊社へご連絡ください。最新のコロナ対策をより取り見取り取り揃えて、お待ちしております。

WPD/S・O