働き方改革 在宅勤務備忘録 その8 ~在宅時のオンとオフ編

POINT
  • 在宅勤務=ファイティングポーズ
  • 見えにくいヘルプ
  • 休むという働き方

前回、「帰宅」のルーティンが人の緊張とリラックスを切り替えるスイッチになっているとお話ししました。みなさんも帰りの電車では自分なりのリラックスの準備をしているはずです。では「帰宅」が失われ、緊張とリラックスがうまく切り替えられなくなったら?わたしたちには何ができるのでしょうか?大事なのは、「帰宅」が失われる=ストレスになる、ではないということです。帰宅のルーティンが損なわれることは、あくまで仕事の後のリラックス時間にストレスを与える「要素を増やす」のであり、在宅勤務で誰もがストレスを感じるわけではなく、在宅勤務中に、仕事に問題を抱えたときに、それがより負担になりやすい、仕事に対して一時休戦の姿勢を取りづらい、ということを理解するのが大切です。

在宅勤務=ファイティングポーズ

在宅勤務とは、いわばいつでも仕事ができるということ。ずっとファイティングポーズをとるということです。相手がなんてことない格下ボクサーなら、別に問題はないでしょう。ところがちょっと手こずりそうな相手なら?まだ職務の経験が浅く、勝手が分からない社員は、仕事の重要度の見極めだってうまくできませんし、心の整理もままなりません。いつまでも仕事のことを考えてしまって、プレッシャーに心を押しつぶされそうになってしまいます。そんな彼らにとって、強制的にリラックスの姿勢に入る「帰宅」はラウンド終了のゴングそのもの。メンタルにとっても、極めて重要でした。仕事ができない状況にいることは一種の口実になり、「今はあれこれ考えても仕方がない」と気持ちを吹っ切るきっかけにもなります。

もしもそんな「帰宅」が失われたとしたら、ぱたんとPCを閉じても、なかなか仕事のことを忘れられず、常に臨戦態勢のまま翌日を迎えてしまうことでしょう。仕事に問題を抱えた人とは常に、被害者側に生まれます。つまりメールを送られる側、連絡を受ける側、仕事をお願いされる側です。定時過ぎに来た連絡に「明日取り掛かります」と答えるのも、気が引けてしまうはずです。だってやろうと思えば今できるのですから。仕事の連絡に対応する姿勢をとる、常にそういう選択肢が与えられていることそれ自体が、彼らにとっては非常に心労となります。それはまるで自宅が職場のように感じられ、自分の居場所をなくしてしまったようです。

見えにくいヘルプ

会社はこういったストレスのケアを、普段以上に念入りに行う必要があるでしょう。なぜなら、社員の様子を目で見ることができないからです。心の様子というのは確認しようと思っても確認できないもの。メールや電話で簡単にストレスチェックができれば、どんなに楽なことか。在宅勤務でなおさら社員の様子が分かりにくいのですから、何かあってからケアをする、というのではなくて、何かが起こらないように準備をする、これが肝要です。在宅勤務がスイッチをオフにしづらい、終業時間があいまいになりがちである、ということをちゃんと理解し、社員に業務管理の徹底を図ること。定時後の緊急以外の連絡も控えさせ、加えて休日の作業も厳しくしなくてはなりません。仕事に問題を抱える人にとって、「仕事ができる状態」というのが如何にストレスになっているのか…入社から日の浅い人ならばなおさらです。休むのも休ませるのも仕事のうち。変に責任感を感じて、休日にPCを開くようなことがないようにしなくてはなりません。コントロールになれたベテラン社員ならその心配はないかもしれませんが、その空気を新入社員にまで与えては、場合によっては、重圧に押しつぶされてしまうことでしょう。

仕事の相談というのは同じ職場の人にするのがベターです。残業中にたまたま居合わせた人に「調子どう?」と聞いてみたり、あるいは仕事の愚痴をぽろっとこぼした経験はありませんか?そういった会話もオフィスならではのコミュニケーションのひとつであり、そういったコミュニケーションによって人はストレスを緩和させているのです。ある時は「これは本当に健康に関わるものかもしれないな」と察することだってできます。これをメールや電話でカバーできると考えているならば、それはあまりに無謀です。

休むという働き方

実に、働き方改革の最終兵器と考えられていた在宅勤務も、このような落とし穴があるものです。しっかり働き、よく休む。わたしたちは思わず「どうやって働くか?」ということに注視しがちですが、それと同じように「どうやって休むか?」にも関心を向けなくてはなりません。つまり、どこでも働けるよう努力するのと同じだけ、どこでも休めるよう知恵を絞る必要があるのです。それは職場から帰宅することに匹敵するほどの、物理的で絶対的な方法か、あるいはメンタルトレーニングで心の使い方を学ぶのか…その方法のひとつに、会社から仕事の仕方をうまくマネジメントするということが含まれているように私は思えます。以前、私の知るマネージャーは「定時後はメールも電話も出ない」ことを徹底していました。上司がそのように働けば、部下も定時後の連絡を控えるようになりますし、なんとしても定時内に連絡を済ませようとするでしょう。もちろん業種によってその方法に制約はあるでしょうが、オンとオフを働き方でコントロールできれば、社員のパフォーマンスが上がることは間違いありません。在宅勤務で社員が目を離れた隙に、ストレスを抱えてしまった…なんてことがないようにしたいものです。

さて、在宅勤務の備忘録も、そろそろ終わりが近づいてきました。この記事を執筆している6月初旬、既に緊急事態宣言は解除され、オフィス通勤へと戻る動きも次第に増えてきています。いよいよ私たちはコロナと共に生活を送るフェイズに差し掛かるわけですが、実際のところ、これらかのオフィスはどうなるのでしょうか?もちろん未来のことは誰も分かりませんが、最後に私なりに考える次のオフィスについて、残してみたいと思います。

WPD/S・O