働き方改革 在宅勤務備忘録 その5 ~コミュニケーション編2

POINT
  • オフィスのコミュニケーションの代わり?
  • コミュニケーション

「オフィスとはすなわちコミュニケーションにあり」。私たちオフィスデザイナーはどうやったらコミュニケーションが活発になるか、ということにひたすら頭をひねっています。なぜなら良好なコミュニケーションは良好な仕事を生み、オフィスの価値はまさにそこで決定するといえるからです。誰もがオフィスを離れることを余儀なくされた今、人々はオフィスのコミュニケーションを失いました。前回はそうやって失ったオフィスのコミュニケーションについて思い出してみましたが、今回は逆に在宅でのコミュニケーションについて考えてみましょう。

オフィスのコミュニケーションの代わり?

在宅のうちにコミュニケーションをとれるとしたら、その手段は「通信」以外にはありません。メール、チャット、通話、ビデオ通話…先ほどオフィスのコミュニケーションが仕事を支えているというお話でしたが、ではこの通信のコミュニケーションを使ってオフィスのコミュニケーションと同じような効果を得ることはできないのでしょうか?隣同士の親方制度のような、あるいは人が集まるスペースでの雑談のような…残念ですが、通信のコミュニケーションが、オフィスのコミュニケーションに代わることは恐らくないでしょう。なぜならこのふたつは目的が異なるからです。

隣同士の親方制度は、双方のコミュニケーションが極めて素早くラフに行われることが重要です。若手が悩んでいそうな状況をちらっと見て確認、あるいは経験者が忙しくなさそうな状況をちらっと狙って質問…メールもチャットも通話も、相手の状況を伺うということができません。隣同士の親方制度が「伺ってから、会話」であったのに対し、通信は「会話してから、伺う」ことになります。若手の方はまだしも、経験者には監督以外のそれなりの仕事があるのです。いちいち若手に「大丈夫?」なんてチャット送って、本当に細かなチェックをその都度行っていては自分の仕事が進みません。それは通信のコミュニケーションが相手の様子を伺うのに不向きだから、そうなるのです。

人が集まる雑談の代わりも難しいでしょう。弊社のサンプル置き場で行われるコミュニケーションの場合、私たちは会話をするためにそこに行くのではありません、何か別の用事があって…私の場合はサンプル帳を開くために…その場所に行くのであって、そこに偶然にも誰かがいて、その結果、偶然にも会話が生まれるのです。ところがメール、チャット、通話、ビデオ通話といった通信は、必ず会話を目的として相手に「発信」する必要があります。最近どう?特に用はないんだけどサ…なんてメールを書く人がいるでしょうか?自分が決めた相手と、自分が話そうと思っていた内容を話す、そこには当然、思いがけない人との会話なんて生まれるはずもありませんし、また誰かが介入する余地もありません。在宅とオフィスとでは、そこで行われるコミュニケーションに違いがあるというのは、ひとつ覚えておく必要があります。

今の時点で、私には通信のコミュニケーションがオフィスのコミュニケーションに代わる方法の答えを持ち合わせていません。そもそも通信はそのようにできていない…というより、そういった「会って行うコミュニケーション」は、オフィスの役目だった、というほうが正確かもしれません。オフィスに行けないこの状況を誰も想定していなかったので、当然、オフィスのコミュニケーションを通信で行う必要を誰も感じていませんでした。若手の作業状況をチラ見したい?オフィスに行けばいいじゃん!とね。

コミュニケーションと人

ここにきて私たちは、在宅勤務の敗北を認める時が来たようです。仕事を支えるコミュニケーションに関しては、完全にオフィスに軍配が上がります。まず、多数の人がいるということ、それもいろんな知識のある人が…それだけでオフィスには圧倒的なアドバンテージがあります。まさに三人寄れば文殊の知恵。しかもそんな人がいつでもそばにいて、すぐに相談できる。ただ顔を合わせるだけじゃなくてアナログでもデジタルでも様々な資料を見せられる。これほどに適した場所はオフィス以外にありません。確かにTeamsなどのツールの発達で在宅勤務の可能性は広く広がりました。ところが、それがオフィスでのコミュニケーションに完全に代わることは(今のところ)考えにくく、特にオフィスのコミュニケーションによって支えられている業種では、在宅勤務には一定のデメリットがあることに気をつけましょう。

このように、オフィスにはオフィスなりの価値があることが分かりました。また在宅勤務が諸手を挙げて賛成できるものでもないということも。このコロナ騒動は見事に4月を直撃し、多くの新入社員に影響を与えました。メールやチャットだけで1から仕事を教えることがどれだけ大変か、みなさん想像できることでしょう。さて、今回は比較的現場、下の立場に立ってのお話、ところがオフィスのコミュニケーションが支えているものは上の立場、つまり管理職にもあるのです。次回は「評価」について備忘録を残しましょう。

WPD/S・O