働き方改革 オフィスにおける「バイオフィリックデザイン」とは何か?

POINT
  • “自然そのものの環境”をオフィス内で再現する試み
  • 緑、音、水、香り・・・東京本社のエントランスが変わる
  • オフィスツアーでバイオフィリックデザインを体感

“自然そのものの環境”をオフィス内で再現する試み

「生物、あるいは生命のシステムに対する愛情」を意味するバイオフィリアという概念は、ドイツの社会心理学・精神分析家のエーリッヒ・フロムによって提唱され、アメリカの心理学者エドワード・O・ウィルソンによって広く知らしめられました。ウィルソンは、「人間には先天的に自然を好み、他の生物との結びつきを求める本能=バイオフィリアがある」と主張しています。

オフィスにおけるバイオフィリックデザインとは、オフィス内のデザインに自然環境の要素を取り入れるもので、そこで働く人の精神的・肉体的な幸福度を向上させるのに効果があると証明されています。Interface社がリリースしたHuman Spaces Reportによると、16カ国のオフィスワーカー7,600人を対象に調査した結果、自然のモチーフを活かしたオフィスで働く人の方が、そうでない人に比べて幸福度が15%、生産性が6%、創造性が15%向上するとあります。
ストレスと仕事の疲れが日常的になっている職場においては、バイオフィリックデザインによって働く人たちのストレスを軽減し、元気を取り戻させ、集中力を向上させる効果が期待できるのです。

しかしここで注意したいのが、バイオフィリック=植栽をたくさん置けばよいと、誤った解釈をしてしまうことです。バイオフィリックデザインとはそんなに単純なものではなく、光や音、色や香りなどさまざまな手段を総合的に用いて、自然そのものの環境をオフィス内で再現する試みなのです。

中でも一番重要なのは、自然光を取り込むことです。自然光は体内時計のバランスを保つために必要で、仕事が集中する日中の気分を快適にし、夜の安眠をサポートします。一日中ブラインドを締め切って人工照明の光を浴びていては、自然の恩恵は得られません。自席がある部屋に窓がない場合などは、サーカディアンライティングシステムの導入をお勧めします。これは、日中は明るく、夕暮れと共にだんだん照度が落ちるように設定された照明のことで、自然光と同じような効果をもたらしてくれるのです。

他にも、小鳥のさえずりやサラサラと小川が流れる音を流したり、落ち着いた海の色を休憩スペースに取り入れたり、ウッディな香りがするアロマを焚いたり。もちろん、活き活きとしたグリーンを配置するのも大いに効果があります。このような直接的な試みのほかに、樹木や葉、木目のような自然界にある形や模様をモチーフにした壁紙を張るといった、間接的な手法でもよいとされています。

緑、音、水、香り・・・東京本社のエントランスが変わる

当社では、バイオフィリックデザインの専門集団である「バイオフィリックデザインワークス」を立ち上げ、本格的なコンサルティング業務に取り組んでいます。バイオフィリックデザインのエキスパートである建築家のオリバー・ヒースをパートナーに迎え、感性に富んだコンサル力に定評のある「KANSEI Design & Co.」と、当社のオフィス設計ノウハウを融合し、バイオフィリアの学術的研究成果を裏付けとした空間設計から構築までを手がけています。

このプロジェクトの一環として、当社の東京本社オフィスのエントランススペースをバイオフィリック化する計画があり、現在実施デザインを作成中です。オリバー・ヒースを本社に招いて現場を視察してもらい、基本設計のアウトラインを策定。オリバーが描いたイメージパースを基に、デザインコンセプトを具体的な設計に落とし込んでいきました。
ナチュラルな天然木の化粧パネルを壁に這わせ、梁は元気が出るような明るいビタミンカラーに塗装。ふんだんに植栽を入れたスペースの隅に、階段状の特注ソファを設置して“おこもり感”を演出します。一面の緑におおわれた中でリラックスする、というのがオリバーのこだわりで、ここは譲れないポイントのようです。

また、四万十川や小豆島で実際に録音された自然の音を、ハイレゾリューションオーディオを通じて流し、BGMにします。ハイレゾはCDなどに比べてかなり高解像度な音源で、人間の耳には聞こえない音域までも録音・再生することが可能。自然界にただよう“音波”まで再現できるため、自然の中にいるのと同じ状態が作り出せるのです。現地での録音は季節を変えながら一日をかけて行われているため、四季や時間帯によってどんどん変化していくそうです。朝昼晩で聞こえてくる鳥の鳴き声が違うなど、臨場感たっぷりの音に包まれ、オフィスに居ながらにして遠い地に思いをはせることができるのでしょう。

細かいところでは、間仕切りを兼ねたウォータースクリーンに本物の水を流し、ゆらゆらとした水の動きから“1/fゆらぎ”のヒーリング効果が得られることを期待。さらに、ハチの巣の六角形の連続を模した「自然界にある複雑な規則性」をモチーフに作られたカーペットをオランダから取り寄せ、バイオフィリックを感じさせるアロマも採用する予定です。このアロマは、前述の「KANSEI Design & Co.」と製薬会社がタッグを組んで研究開発を進めているもので、どんな香りになるのか今から楽しみにしています。

オフィスツアーでバイオフィリックデザインを体感

オフィスのバイオフィリックデザインにご興味を持たれた方は、ぜひ当社のオフィスツアーに参加され、リニューアル後のエントランススペースをご覧になってみてください。自然環境を再現したオフィスとはどのようなものか、ご自身の五感を通じて味わえるはずです。ここ数年で、バイオフィリックデザインは急激に盛り上がってきていると感じています。貴社のオフィス環境を改善し、働く人の幸福度に寄与できる新しい試みを、ぜひご検討ください。

働き方研究室/I・T