オフィスレイアウト オフィスの動線について

POINT
  • レイアウト=パズル?
  • 広場の効果
  • オフィスに広場は必要?
  • 動線の広場化
  • 本当に効率のいいレイアウト

もしあなたが新しくオフィスを構えたいと考えているならば、その関心のほとんどがレイアウトにあることでしょう。決められたテナントに、決められた社員数を、どういれるか?書庫を、会議室を、エントランスを?人によってはまるでパズルのように思われるかもしれません。そしてオフィスデザイナーはパズルを解いてお金をもらっているんだと…いやいや、ちょっと待ってください。まあ確かにレイアウトにはパズルの要素があることは認めましょう、ところが実際はそう簡単にはいかないものです。
今回は、そんなオフィスのレイアウトについて、ひとつお話ししたいと思います。テーマは「空白」について。

レイアウト=パズル?

借りたスペースに机や棚を配置するとき、人が真っ先に考えるのはなんでしょう?それはもちろん、「効率」ですね。できるだけ多くの人を、多くの書庫を、多くの会議室を、無駄なく、不足なく、いれるにはどうしたらいいのだろうか?と。机を縦に並べたり横に並べたり、柱に合わせて棚を置いたり。レイアウトをパズルと呼ぶのはまさにその意味においてです。そしてそのパズルのルールとは、限られたスペースに入れられるだけの什器を配置するということ。ところが、どんなに効率的に棚や机を配置したとしても、私たち人間はそこに至るまでの動線を作ってあげる必要があります。そしてその動線/通路には法的な基準があるため、日本中、いや世界中どのオフィスにも「何も置かれていない空白」は必ず存在することになります。レイアウトをパズルと捉えるならば、その空白は少なければ少ないほど良しとされることでしょう。ところが、本当にそうでしょうか?
建築にはいろんな概念があります。その中のひとつ、「広場」という概念をご紹介しましょう。広場くらい知っとるわい!なんて、そうおっしゃらないで…

広場の効果

広場、と言われてどのような空間を思い浮かべますか?丸くて、周りに建物はあるけど、そこには何もない空間。公園というよりも、どちらかと言えば大きなビルの一階だとか、大学のキャンパスにあるちょっと開けたエリアだとか、そういうものをイメージされることでしょう。実はこういった広場は、ただ適当にぽんと作られたわけでもなければ、作って良いわけでもありません。建築には「広場論」と言われるような論説があるくらい、その扱いにはとても神経を使うのです。なぜか?

空白が無駄であると思われるのは何もオフィスに限らず、建築とて変わりはありません。うん億円をかけて大学のキャンパスを作ったのに、そのほとんどが広場で、肝心の講義室が狭い、となればクレームは必至でしょう。ではどうして広場を作るのか?と言われれば、広場は人を集め、交流させ、その建築に動きとコミュニティを生み出す効果があるからです。逆を言えば、人が集まらず、交流のない広場には意味がないということ、そしてこれの意味するところは、広場は「そこに作れば勝手に人が集まる」…なんて簡単なものじゃないということです。そこに人を集めるならば、ちゃんとした計画、設計が不可欠で、その結果人が集まれば効果は絶大だけれど、集まらなければ多くを犠牲にする。それが広場なのです。

オフィスに広場は必要?

さあそこで、次に私がお話ししたいのは、オフィスに広場は必要か?ということ。答えから言います、必要です。むしろオフィスに広場はなくてはならない存在である、とまで言ってしまいましょう。もちろんキャンパスのように数十メートルに及ぶ巨大な広場は作れませんが、広場と同じ機能をもった空間を作ることはできます。人が集まり、交流が生まれ、オフィス全体に活き活きとした風を吹かせてくれるスペース、そんな空間が。この空間はオフィスによってさまざまな呼ばれ方をするでしょう。カフェエリア、書庫エリア、リフレッシュエリア…ですが最初に申し上げた通り、オフィスレイアウトは第一に効率を求められます。社員数によってはカフェエリアなんて作ってる余裕はない!というケースもよくあることです。であるならば、オフィスにどうしても出来てしまう「空白」のスペース、すなわち動線をこの広場にすることはできないでしょうか?

動線の広場化

動線が広場になる…とはいったいどういうことでしょうか。先ほど少しだけ、広場論についてお話ししましたね。広場っていうのは丸くて、大きくて、周りに建物があってその中心で…実はこういった広場のイメージは本来、西洋から渡ってきたものでした。ちょっと思い浮かべてみてください、あなたのイメージするその広場、そっくりそのままフランスやイタリアの街並みではありませんか?日本の広場は少し違いました。建築の広場論では、「日本古来の広場とは縁日である」と考えられています。お寺に向かって伸びる参道と、その両側に並ぶ屋台…あの様子です。あれが昔から日本にあった広場なのです。言われてみれば確かに、人が集まり、交流がありますよね。注目したいのは、屋台に挟まれたスペースは道であるということ。そう、もともと日本の広場とは円ではなく、線なのです。であるならば、動線を広場にしてしまうというのも、あながち机上の空論ではないように思いませんか?

本当に効率のいいレイアウト

多くの場合、動線は「空白」として無駄なものと考えられています。少なければ少ないほうが良い、と。もしもこの動線に広場の意味を与えられたら、すなわち動線が「人が集まり交流する場所」になったとしたら、それはもう空白でも無駄な場所でもありません。そしてもし動線が空白でないのならば、そのオフィスに無駄なところは一切なくなる、まさに効率のよい理想のオフィスになることでしょう。これは動線をできるだけなくそう、というような、レイアウトをパズルとして扱う方法では決して導けない答えの一つです。この場合、むしろ動線はちょっとくらい多くてもいいかな?なんて考えてしまうかもしれませんね。実際には、縁日の正体は屋台やお祭りといった機会によって「広場化された参道」です。いつも参道が人でごった返していたら邪魔で仕方ありません。同じように、オフィスの動線にもいつも人が埋まっていたら困ります。なので、動線もまた参道のように、特定の時にだけ広場化されればよいのです。でもいったいどうやって?

これはさほど難しいことではないでしょう。例えば動線の壁にホワイトボードをつけるとか、あえて交通量の多い動線にしてすれ違う人の会話を促すとか、そのためにちょっとした腰掛を用意してあげるとか…どうですか?ここまでくれば動線を広場にする、という話も決して絵に描いた餅ではありません。そして実は、この視点に立っていろんなオフィスを見てみれば、「普段は別の使われ方をしているけれど、ある時に広場化する」スペースは、たくさん事例があります。それを見つけてみるのも面白いでしょう。

もしあなたが、レイアウトをただひたすらに家具を並べるものであると捉えているのならば、今回の話はちょっとした頭を切り替えのきっかけになったかもしれません。もはやオフィスに机を敷き詰める時代は終わりました。今は社員数を確保しつつ、コミュニケーションも確保する時代です。スペースは依然として大きさが変わらないのですから、動線だってどんどん活用すべきです。そういえばうちのオフィスのあの空間、無駄だなあ…と思われたならば、いつでもご相談ください。

WPD/S・O