オフィス家具 オフィス家具の選び方

POINT
  • 家具が決まらない!どうして?
  • ABか?
  • コンセプトこそ法なり
  • カタログの誘惑
  • タグ付け

インテリア、それは人が生活をする上で決して避けては通れないデザインのうちのひとつ。きっと多くの方が、一度は自分の部屋の内装に頭を悩ませたことがあるでしょう。家具を変えたり、カーテンを変えたり…他の建築分野と比べ、とても身近で、好みを反映させやすいインテリアは、オフィス作りにおいても特にこだわりが表れる部分です。カラフルがいい、落ち着いた雰囲気がいい、ポップが、クールが、ゴージャスが…こだわりがあるぶん、それだけもめるというもの。人の好みはそれぞれ異なるわけですから、当然とも言えますね。
そんなもめやすいインテリアデザインの中でも、さらに特別に頭を悩ませるのが家具です。そこで今回はインテリアデザインを決定するアドバイスを、家具に焦点を合わせて、お伝えいたしましょう。

家具が決まらない!どうして?

まず初めに、インテリアの中でも、どうして家具が一番決めにくいのでしょう。その理由は主にふたつあります。

ひとつめは、時期。オフィス移転の場合、設計→工事→引っ越しと作業は進みますが、家具は最後、引っ越しの際に納品するものです。ということは、本当に最後の最後、引っ越しにさえ間に合えばよいので、発注も一番先延ばしにすることができます。この「まだ悩む時間はある」というのが非常に厄介で、「今回は決めきれないから、また次の会議で…」というケースは何度もありました。中には引っ越しが終わってから決めるなんて話もあるほど。もしも執務椅子や執務デスクならば、引っ越し時に間に合わないと仕事になりませんが、食堂スペースの椅子ならばしばらくは何とかなる…といったところでしょうか。家具はいつまでも先延ばしにできる、そのおかげで助かることもあれば、それがいたずらに判断を迷わせることもあるのです。

ふたつ目は、機能。インテリアの中でも、壁紙や床材と違って、家具には明確な機能が備わっています。椅子で言うならリクライニング機能やひじ掛け…家具は社員が実際に触って、座って、使用するものですから、これらの機能のクオリティがダイレクトに伝わり、良いもの悪いもの評価がシビアに下されます。それはつまり、新しいオフィスの印象の多くが、家具から受け取るということです。一人暮らしや結婚などで自宅を引っ越した経験のある方ならきっと納得していただけることでしょうが、どんなに部屋や土地が新しくなったとしても、ベッドや机といった実際に手に触って使用する家具が今までと同じものだと、なんだかいつも通りの印象を感じてしまうものですよね。オフィスも同じ、せっかく引っ越したのに椅子も机も本棚も、全て今までと同じものを持ってきたらきっと「新しい」という印象が薄れることでしょう。

そういう理由で、家具を買い換えることにこだわるお客様はとても多くいらっしゃいます。また、新しい家具にしたからと言って、それが今まで使っていた家具よりも低いグレード品だとどうでしょう。「確かに新品にはなったけど、なんか安っぽくなったなあ…」なんて社員に思われかねません。そのとき、どんなに壁紙や天井にこだわりの高級品を使っていたとしても、実際に手に触れる机、長く使う家具のグレードが下がったということで、オフィス全体の評価も下がってしまいます。これではせっかくのこだわりも逆効果、お金の無駄というものです。だから多くのお客様は、なるべく良いものを選ぼう、なるべく社員に喜んでもらえるものを選ぼうと、家具にこだわるのです。

AかBか?

それでは、私たちはどのように家具を選ぶべきでしょうか?そのコツは?まずは実際にありそうな例を紹介しましょう。

そもそも、インテリアデザインというのは、極めてあいまいであるということを知るべきです。私たちインテリアデザイナーは、往々にして2つほど案を用意し、お客様にご提案します。AとB、どちらがよろしいでしょうか?と。そしてこの時、AとBの違いは絵画や音楽ほどはっきりと好みが表れるものではなく、ほとんどの場合、「どっちも変わらない」と思われることだと思います。AとBが壁も床も天井もなにもかもが異なる案なら、まだ良いでしょう。お客様のこだわりによっては、最終的には「2脚の椅子が暗い木目か明るい木目か」…というようなAとBが提出されます。確かに、明らかにAとBで椅子の色味は違うんだけれども、どっちが良いかと言われれば…どっちも変わらない…そんなものなのです。インテリア、特に家具の決定において「絶対にこっちがいい!」はかなり珍しいケース。時として私たちデザイナーも「もうどっちでも変わらないのでは?」と思ってしまうことさえあります。

▲AとB、どちらにいたしましょう?明るい木目?暗い木目?

一体どうしてこんなに悩んでしまうのでしょうか。デザイナーの腕がいいから?うーん、きっとそれもあるでしょう。ところが一番の問題は、「どういう空間にしたいのか?」というゴールがあいまいなことなのです。

コンセプトこそ法なり

こんな時に私たちの判断を助けてくれるもの、それがコンセプトです。さあいまここに記しましょう、「迷ったら、コンセプトに従うべし」!

コンセプトとはなにか?簡単です。ずばり「あなたはどんな空間にしたいですか?」、これの答えがコンセプト。例えば「落ち着いた空間」「生き生きとした空間」「和を感じる空間」…具体的であればあるほど良いですが、ざっくりと「暖かい」「冷静」といったキーワードでも構いません。これがデザインには大事なのです。そう、デザインは1も2もコンセプト。いやいや、3も4も5も6も、ずっとコンセプトです。コンセプトとはすなわちデザイン全体をまとめるルール、言うなれば指揮者、あるいはその空間における合っている、合っていないを判断する絶対の法です。先ほどのAとBの話に戻りましょう。どちらも良いなあ…当たり前です!デザイナーは「見栄えが良いもの」しか選びませんし、正解しかお客様には提案しないのですから、どちらも良いのです。ただ、その時に最後に決めるのはコンセプト。例えどんなに見た目は良くても、「明るい空間」というコンセプトであるならば暗い木目はハズレになり、「シックな空間」がコンセプトなら明るい木目はハズレになるのです。

カタログの誘惑

もしコンセプトをないがしろにすればどうなるでしょう?家具はカタログから選びますが、家具メーカーにだってもちろん、一流のデザイナーがいます。どの家具もかっこよく、美しく見えるでしょう。カタログの写真だってプロ中のプロが撮影したもの。あるいは、あなたが写真だと思っているものはCGかもしれません。そうして一流の人たちが家具を売るために作ったカタログ、どれも素晴らしい製品です。

そこで、そのカタログだけを見て、商品のベストを選んだら?きっとインテリアはちぐはぐで、「一個一個のアイテムは良いんだけど、全体の統一感がない」という結果になってしまいます。まさに木を見て森を見ず。学生のころ、私は腕時計の広告の大人っぽい雰囲気にあこがれてお店に入るも、自分には全く似合わなくてショックだったことがありました。それもそのはず、広告の腕時計は、それが似合う服に、それが似合う男が、それが似合うポーズで映っています。私はその腕時計に似合う服もムードも持ち合わせていなかったのです。インテリアも同じです。カタログにはきれいに映る椅子も、果たして本当にあなたのオフィスの目指す雰囲気に合うのかどうか?これを見極めなくてはなりません。その雰囲気こそが、コンセプトなのです。

タグ付け

もう少し難しいお話をしましょう。コンセプトが決まったならば、次は選定の「タグ付け」が必要です。例えばスチール脚の家具なら「システムチック」「冷静」「知的」の印象を与える…だとか、レザーの張地なら「カジュアル」「遊び心」「年代」の印象を与える…などなど。選んだ家具にキーワードや印象を次々に当てはめていきます。そうしたうえで、コンセプトに照らし合わせれば、自ずとベストな家具が見つかることでしょう。ひとつ注意したいのは、タグ付けもまた、家具そのものだけに注視して行うべきではないということです。確かにレザーはカジュアルな雰囲気を与えますが、応接セットに合わせればどうでしょう。たちまち「厳か」「役員」「ラグジュアリー」といった印象に代わります。カタログの写真は、それぞれがしっかりとコンセプトに沿って、その家具が際立つようにセッティングされたもの。そこから家具だけを抜き出して別のオフィスにあてがったところで、同じような役目を果たしてくれるとは限らないのです。

もちろん、それをひとつひとつ検証する…そんな作業はデザイナーにお任せすべきですし、また私たちも得意とするところです。ですが、お客様の頭の中のイメージを固めること、これはとても難航しがちです。「カジュアルなオフィス」と一口に言っても、その頭の中に思い描くカジュアルはそれぞれ異なります。だからこそ、コンセプト決めは極めて慎重かつ一番時間をかけて行うべきです。私たちがお客様に求めるのはただ一つ、「どんな空間にしたいのか」を教えてほしい、ということです。

「もっとコンセプトを練っておけばよかったぁ」と後悔することは少なくありません。コンセプトはデザインの土台、料理で言うなら献立、旅行で言うなら目的地、小説で言うならオチです。「あなたは何をしたいのか」、これをしっかり決めておかないと、思いがけないところで判断に悩み、いやに時間を取られてしまいます。もしあなたのオフィス作り、デザイナーとの打ち合わせがコンセプト決めから始まらなかったら…そのときは要注意かもしれません。

WPD/S・O